苗床に「手が届かないなら椅子使え」って言ったのは俺だ。 だから、今、棚の最上段の資料を取るために、苗床は椅子を持っていっているんだろう と思う。 それを見ながら、「手が届かないなら俺を頼れよ」と言うべきだったかと、思いつつ。 でも別の期待が捨てきれなくて、俺は苗床の動きを黙って見守っていた。 椅子を使えば、苗床でも最上段に届くだろう。 棚の前に椅子を置く。 その上に、乗る。 棚の方を向いて、最上段に手を伸ばす。 ……立つと見えないんだけどな。 座ったまま、ちょっと姿勢を低くすると…… ………… 「椿君」 「なんだよ?」 「なんで階段に来ると、必ず私の真後ろ歩くの?」 「気にすんな」 「気になるよ。普段は別に横歩いてるのに」 「気にすんなって。それより、生徒会に言うこと聞かせられんなら、制服変更とかもでき ねーかな」 「そりゃ難しいと思うけど……今の制服いやなの? どう変えたいわけ?」 「変えられんなら、女子の制服のスカート丈をもっと長くする」 「……椿君って、意外と古い……?」 |