今日は四月一日。エイプリルフールである。
学校は春休みだが、私と椿君は学校の部室にいた。
新入生が入ってきた後の部活説明会の打ち合わせとかなんとか色々で、お恭先輩に呼び
出されたんだけど、肝心のお恭先輩が遅刻中という状況。
お恭先輩を待ちながら、椿君とエイプリルフールについて話をしていた。
エイプリルフールは罪深いと思う。信頼関係が深ければ深いほど、相手の言うことを真
に受けてしまったり、逆に本当の話を嘘だと思ったり。
学生にとっては春休みのただなかであることは、不幸中の幸いだ。新学期が始まった後
の四月十日とかが四月馬鹿だったとしたら、悲劇は拡大していたに違いない。
「恋人同士のエイプリルフールには悲劇しかないね!」
「そうか?」
私の持論を述べると、椿君は首を傾げた。
では、私が中学時代に観察してきた悲劇の数々を語って聞かせるとしよう。
「『好き』の反対は『嫌い』でしょ? 『付き合ってる』の反対は『別れる』じゃん?
安易な嘘に流れると、相手を振り回して、新学期になる頃にはそれが真実になってたりと
かね」
「へー」
「椿君の、エイプリルフールの思い出とかは?」
「ねーな。四月一日に同級生に会ったことがそもそもねー」
……椿君、友達が……
いけない、そこは突っ込んじゃいけないところだった。
「苗床は?」
「観察してた以外に、自分の思い出なんかあるわけないじゃん。嘘吐く相手がいなかった
よ」
「だよな」
一回言葉を切ってから、椿君は首を傾げた。
「今はどうだ? 花井とかいるじゃん」
私も首を傾げた。
「うーん『実家に帰ることになった』とか?」
って言った途端。
「ええっ!?」
椿君が腰を浮かせて、大声を上げた。
顔青いよ、椿君。
「嘘だよな!?」
なんでこの話の流れで、そんなに驚かれるんだ。
「嘘だよ、嘘に決まってるじゃん」
「……ヤベェ、わかっててもびっくりした。エイプリルフール駄目だ、心臓に悪ぃ。嘘禁
止な」
……椿君て、実は結構騙されやすくて純真なのかな……
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