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 山田のところに電話して、宝校の文化祭に行く時の待ち合わせを決めて電話を切ったら、
横に亮太がいた。
「透太君」
「ん、なんだ亮太」
 電話切るの待ってたのか。
 亮太は翔太と違って、用がないのにこんな風に話しかけるのを待ってたりはしないから、
用があるんだろう。
 うちの兄弟の中じゃ勉強もできるし、亮太はなんとなく椿に似てるよな。
「透太君、宝校行くの?」
「ああ、文化祭、友達に呼ばれたんだ」
 一緒に連れてってとか言うのかな。……うーん、弟連れてっても平気かな。
 平気か。花井は大丈夫だろうし、山田も大丈夫だろうし。
 うん、大丈夫、と答を用意した所で、亮太は言った。
「じゃあさ、学校案内のパンフレットみたいなのあったらもらってきてくれないかな」
 ……パンフレット。
 パンフレットでいいのか。直接見るんじゃなくて。
「何に使うんだ?」
「パンフレットの使い道なんて、見る以外にある?」
 ……うん、見る以外にはないなぁ。
「亮太、宝校行きたいのか?」
「うん、進学校だし、公立だから授業料安いし」
 小学校四年で、そこまで考えてるのかー。
「俺は多分亮太が高校入る頃には働いてるから、授業料とかあんま気にすることない
ぞ?」
「……透太君は大学行かないかもしれないけど、行こうと思ったら現役で入れると思えな
いんだよね」
 え。
「ストレートでも透太君が卒業する前に僕は高校に入るし、浪人したら二年以上重なる
し」
 ええ……
「亮太、ナマイキすぎ」
 俺が絶句してる間に亮太の後ろに来てた翔太が、亮太の頭をペンと叩いた。
「痛いな! 翔太君」
「ナマイキなこと言ってるからだよ」
「僕が高校行く時、まさに翔太君が大学行くんじゃん。二人進学って大変じゃない」
 亮太は賢いから、気を回しすぎなんだよなあ。
 俺もそうだけど、翔太が大学行くとは限らないし、そんなに気にすることないのに。
「だからそれが生意気だって」
「翔太、やめとけって。亮太、パンフレットでいいのか? 兄ちゃんと一緒に見に行くっ
てのもあるぞ」
「パンフレットでいいよ。……まだ先だし、透太君、友達と一緒に行くんでしょ。邪魔は
しないよ」
 やっぱり気を回すよなー。
「わかったよ」



 そんなわけでと帰り際に、みんなにパンフレットを貰いに行くのに付き合ってもらった。
 無事にパンフレット貰って帰ってきて。
「ほら、亮太」
「ありがと、透太君……どんな学校だった?」
「普通だったよ」
「普通?」
 進学校だから、お堅い想像をしてたのか。
 でも普通だったよなあ。
「普通だった」
「普通ってどんな風に?」
「ミスコンやってて、友達が出てたんだけど、執事のコスプレしてた」
「…………」
 ……普通だよな?
「……受ける前にはちゃんと自分で見にいくことにするよ」

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